はじめに
8歳頃のことです。
「ブラジル・ジーコサッカー教室への留学生募集」という新聞広告を見つけた私は、その切り抜きを母に見せました。
すると母は、ほとんど間を置かず、即断即決で「やめとき」と言いました。
私は、ただ「うん」とだけ答えて、部屋に引っ込んだことを覚えています。
最終的に反対されたこと自体は、特に何も思っていません。親としては当然の、現実的な判断だったのでしょう。
ですが、このほんの十数秒の出来事は、当時の私では上手く言葉にできないような「小さな傷」を、私の心に残しました。
1. 「理解したい」が深める関係性
ご紹介した、8歳の私と母のやりとり。私はそのとき、どんな気持ちになったんでしょうか…?
8歳の私こんな募集あるんだけど…



やめときなさい。



うん。
この会話、もしも、以下のような流れになっていたとしたら、どうなっていたのでしょう…?



こんな募集あるんだけど…



へー!
サッカーの本場はブラジルだもんね。
しかもジーコに習えるなんて!
そりゃ行きたくなるね。



そう!
ジーコから直接サッカー教えてもらえるんだよ!
すごくない?!
おそらく、少年の私が抱いた母への印象は、全く違ったものになっていたでしょう。
2. まず「理解に徹する」
私は、誰かと向き合った瞬間、まず「理解に徹する」ようにしています。
その理由は、以下の2つです。
- 「理解不十分」は関係を壊す
- 「理解したい」は関係を深める
2-1. 「理解不十分」は関係を壊す
一つは、相手のことが分からないうちに、
- この人に正しいことを教えてあげよう…
- この人にはあのサービスを勧めよう…
などと先入観や思い込みから勝手に判断してしまうと、相手が求めていない話をしてしまったり、心を閉ざしてしまったりするからです。
例として、支援の現場で、よくありがちな会話を紹介します。



ごはんは、3食焼きそばです。



え?!
そんな食生活続けてると栄養が偏って…



あ、そんなことは分かってるんですが…



ヘルパーさんに来てもらって援助してもらいましょうか!
それが良いと思いますよ。



話を聞いてほしい…
他にも、たとえば、
- 症状を聞かずに処方箋を出す医者
- 部下の考えを聞かずに叱責する上司
- 話を遮って主張してくるパートナー
そんな人たちと会話を続けたいとは、あなたも思いませんよね。
2-2. 「理解したい」は関係を深める
もう一つの理由は、まず「理解する」を心がけることによって、
- この人の目から世界を眺めたら、どんな景色なんだろうか?
- この人の心は今、どんな状態なんだろうか?
- この人を笑顔にするには、何が必要なんだろうか?
といった、「相手に対する興味」や「関係を深めたい思い」が伝わるからです。



ごはんは、3食焼きそばです。



そうなんですね。
差し支えなければ、どうして焼きそばなんですか?



節約したくて…毎月、食費は15,000円以内って決めてるんです。



へ~、なるほど。
工夫しながらやりくりされてるんですね。
節約、っていうと…、どんな理由があるんですか?



この人なら信頼できるかも…
話しても否定しなさそうだし…
こんなふうに「あなたのことをもっと知りたい」という思いが伝わってくると、
誰もが、
- 私に関心を持ってくれている
- 私の立場に立ってくれている
と感じて嬉しくなると思います。
そんな「心を開いた関係性」の先に、信頼関係が生まれていくものだと、私は考えています。
まとめ
「あなたを理解したい」という心の姿勢は、
- 「あなたが心から求めていることを知りたい」
- 「あなたに関心があります」
といった気持ちが伝わり、相手が安心感を感じる空気が生まれるきっかけになります。
――なかなか相手が自分を受け入れてくれない…
そんな悩みを持つ方は、先入観や思い込みにとらわれず、
「まず相手を理解しよう」という気持ちで会話を進めてみてください。
きっと、良好な信頼関係を築くことにつながるはずです。
